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アヒマディ博士のジュエリー講座 Vol.14
宝石の科学―トルマリンの多彩な変種と最高価値の“パライバ・トルマリン”

 トルマリン(電気石)は非常に馴染みのある宝石で、10月の誕生石でもあります。宝石の中で最も幅広い色相を持ち、人々を魅了しています。シリコン、アルミニウム及びホウ素などの主元素から構成された化学組成の複雑な鉱物として、主に花崗岩質のペグマタイトから産出され、ブラジル、アメリカ、そして東南アジアとアフリカの各地から宝石品質のトルマリンが採掘されています。トルマリンには、黒色、緑色、青色、黄色、赤色、ピンク、紫色、褐色、無色などの多彩な色相があります。その中でも赤色、青色、緑色のトルマリンは高く評価されますが、銅を含有し非常に鮮やかな青色から緑色をもつトルマリンは別格で、“パライバ・トルマリン”と呼ばれ最高のプレミアが付きます。

 トルマリンは化学端成分から見ると、33種類もありますが、その特性から主に以下のような5つの変種に分けられます。

1:リシア電気石(エルバイト-Elbaite)

インディコライト

▲インディコライト

 ナトリウムとリチウム元素が豊富なトルマリンで、無色のアクロアイト、青色のインディコライト、ネオン・ブルーのパライバ・トルマリン、赤~ピンク~紫色のルベライト、緑色のヴェルデライト、黄色のカナリー・トルマリン、2色や3色の色あわせのバイカラー・トルマリンやウォーターメロン・トルマリンなどはこの変種に属します。世界各地のペグマタイト鉱山から産出される宝石質のトルマリンの大部分はこのタイプです。含まれる微量な遷移金属元素の違いによって、さまざまな色相が生まれます。

ルベライト

▲ルベライト

ヴェルデライト

▲ヴェルデライト

バイカラー・トルマリン

▲バイカラー・トルマリン

ウォーターメロン・トルマリン

▲ウォーターメロン・トルマリン

2:リディコータイト(Liddicoatite)

リディコータイト

▲リディコータイト

 ナトリウムの代わりにカルシウムが多く含まれ、複雑な三角形の成長累帯構造を持ち、多様な色の積み重なりからできたトルマリンです。マダガスカルは唯一の産地として知られています。

3:苦土電気石(ドラバイト-Dravite)

ドラバイト

▲ドラバイト

 マグネシウム元素が豊富で、黄色や赤色がかった褐色のトルマリンとして変成岩中に産出されています。宝石質としての産出は少なく、ツァボライトに匹敵するほどの緑色は最も希少です。

4:灰電気石(ウバイト-Uvite)

 カルシウムとマグネシウム元素に富んだトルマリンで、苦土電気石と混合しながら産出されるものが多いです。色は黒色に近い色で、宝石としての評価は低いです。

5:鉄電気石(ショール-Schorl)

ショール

▲ショール

 高含有量の鉄を含み、黒色のトルマリンです。地球上に産出されるトルマリンの95%が黒色で占められ、静電気を生じることで、お風呂に入れて使うケースが人気です。まれに宝石として使用される場合もあります。

最も人気なトルマリン-パライバ・トルマリン

パライバ・トルマリン

▲パライバ・トルマリン

 “パライバ”・トルマリンはすべてのトルマリンの変種の中で最も価値があり、人気があります。この商業名は、ブラジル北東にあるパライバ州のMina da Batalha鉱区から産出された銅(Cu)とマンガン(Mn)を含有する彩度の高いブルー~グリーンのエルバイトに初めて使用されました。もともと1987年に発見され、その後しばらくして宝石市場に現れました。1990年代の宝石取引にはリオグランデド ノルテ州の2つの鉱山からも同様な、彩度のやや低いブルーの含銅トルマリンが出現しました。2010年までには、ブラジルのこの三つの鉱山における生産量は日本のパライバ・トルマリン需要のほとんどを満たしていました。

 2001年からナイジェリアの西部で産出したエルバイト・トルマリンが宝石業界で知られるようになりました。イバダン州のエデコ鉱山から淡いブルー、バイオレット・ブルー、ネオン・ブルー、ブルー~グリーン、“エメラルド”グリーンなどのさまざまな色調のものが産出しており、これらの色はブラジル産パライバ・トルマリンと同様にCuとMnの含有量に起因しています。そして化学分析値も重複しています。このナイジェリア産パライバ・トルマリンの産出量は圧倒的に少なく、ドイツ、ブラジル及びバンコクで販売されていましたが、採掘鉱山はすでに枯渇しています。

 また、2005年の中頃、モザンビークの鉱山からもCuを含有するエルバイトが発見され、淡いブルー~グリーン、バイオレット、ピンクなどのトルマリンが産出されました。銅の含有量が少ないため、そのネオン・ブルーの鮮やかさもブラジル産パライバ・トルマリンと比べて一段低いと言えます。

 “パライバ”トルマリンの取引においては、外観だけでなくその産出された地理的地域によって価格がつけられています。原産地情報が重要となり、鑑別機関は最先端の科学分析機器により、各産地の宝石学的な特性と特異な化学元素を調べ、産出地を評価しています。

ブラジル産ブルーパライバ

▲ブラジル産ブルーパライバ

ブラジル産ブルー~グリーンパライ

▲ブラジル産ブルー~グリーンパライバ

ブラジル産グリーンパライバ

▲ブラジル産グリーンパライバ

“パライバ・トルマリン“の名称

 “パライバ・トルマリン”の名称は最初に発見されたブラジルのパライバ州の産地に由来していますが、その後、同様に銅を含むトルマリンは同国の隣接するリオグランデ ド ノルテ州や、アフリカのナイジェリアやモザンビークからも採掘されています。宝石学的特性や化学組成が重複しているため、一般的な鑑別技術では、地理的な産地を識別するのが困難です。国際的に権威のある鑑別機関から構成された“ラボ・マニュアル・調整委員会-LMHC”がCuとMnを含有するブルー~グリーンのトルマリンについては、産地に問わず、トレード用語として“パライバ・トルマリン”と称することを推奨しています。

執筆

阿依 アヒマディ博士 理学博士・FGA

京都大学理学博士号取得後、全国宝石学協会 研究主幹を務め、2012年にGIA Tokyoラボを立ち上げる。現在はTokyo Gem Science社の代表そしてGSTV宝石学研究所の所長として、宝石における研究、教育セミナー、宝石鑑別などの技術サポートを行っている。宝石の研究、鑑別に関しては日本を代表する宝石学者。

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