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アヒマディ博士のジュエリー講座 Vol.30
世界最古の宝石の一つ「石英からできた宝石の大家族」

ロッククリスタル

 石英は、地殻のいたるところに存在し、どのようなタイプの岩石にも含まれる主要な造岩鉱物です。美しい六角柱状の水晶、砂漠の砂も二酸化珪素で構成された石英の結晶鉱物なのです。透明な水晶から半透明なメノウまでは何千年も前から宝飾品として身に付けられてきました。宝石としての石英は結晶性質、形態、包有物などによって以下のような変種に分類されます。

肉眼で見える結晶質の石英

 単結晶からできた無色の石英は水晶(ロッククリスタル)と呼ばれ、不純物(着色元素、格子欠陥)によって着色された石英は、紫水晶-アメシスト(鉄イオン[Fe4++Fe2+]に由来)、黄水晶-シトリン(エネルギー準位の異なる鉄イオン[Fe3+]に由来)、煙~黒水晶(放射線を受けた色中心に由来)、紅水晶(マンガン、鉄、チタンイオンに由来)、緑水晶(微細な包有鉱物―角閃石に由来)と呼ばれます。

 また形態によって、二つの単結晶から接合し成長した双晶(日本式双晶)や、結晶の両端に錐面を持つハーキマー水晶、結晶片側の先端が大きく成長した松茸水晶などがあります。

肉眼で見える様々な鉱物結晶が入った水晶は、ルチル入り水晶、トルマリン入り水晶、 緑泥石入り水晶(アベンチューリンクォーツ)、水入り水晶と呼ばれます。

ブラジルのミナスジェイラス産ローズクォーツ

▲ ブラジルのミナスジェイラス産
ローズクォーツ

アメリカ産水晶の集合体

▲ アメリカ産水晶の集合体

アメリカのハーキマー産両錐水晶

▲ アメリカのハーキマー産両錐水晶

日本式双晶

▲ 日本式双晶

松茸紫水晶

▲ 松茸紫水晶

アフリカのナミビアで見られる巨大なペグマタイト鉱脈に多くの水晶群が含まれる

▲ アフリカのナミビアで見られる
巨大なペグマタイト鉱脈に多くの水晶群
が含まれる

肉眼で見えない塊状の結晶質石英

 陰微晶質の石英の集合体を玉髄(カルセドニー)と呼び、自然界で鍾乳状やブドウ状のような半透明な塊状として産出され、その色と産状によりカルセドニー、アゲート、カーネリアン、クリソプレーズ、ジャスパー、オニックス、ブラッドストーンと呼ばれます。

ブルーカルセドニー

ブルーカルセドニー

アゲート

アゲート

カーネリアン

カーネリアン

クリソプレーズ

クリソプレーズ

オニックス

オニックス

 水晶-ロッククリスタルは無色透明で、古代から溶けない氷のシンボルとして珍重され、自然でそのままの姿や、容器として利用されてきましたが、装身具として最も多いものはアメシストとシトリンです。

 アメシストは最も美しい紫色宝石のひとつとして、王冠や宗教の宝飾品や司教の指輪に使われ、その価値はかつて五大宝石と同じ価値があると考えられていました。古代ギリシャではアメシストを身に着けると、ワイン色を連想し“酒に酔わない”という意味があり、戦闘では頭脳の回転が良くなると信じられていました。アメシストは宝石として数千年の歴史を持ち、誠実、心の平和も表し、2月の誕生石に選定されています。

アメシスト

ブラジルのミナスジェイラス州に分布するペグマタイトから多くのアメシストが産出される

▲ ブラジルのミナスジェイラス
州に分布するペグマタイトから
多くのアメシストが産出される

ブラジル産天然アメシストの結晶集合体

▲ ブラジル産天然アメシストの
結晶集合体

 鉄イオンによって着色された紫色の水晶で、最も珍重されてきたクォーツの変種です。明るいライラック色から深みのある濃いパープルまでの色範囲があり、成長構造に沿った濃淡の帯状の色むらがよく見られます。最上質なものは色むらを伴わない彩度の高い強い赤みを帯びた濃いロイヤルパープル色です。褐色味の強いものや、色むらのあるものは、その価値も大きく下がります。色の極めて暗いものは加熱処理によって明るくすることができます。ブラジルのミナスジェイラス州はアメシストの世界最大の産出地として知られ、巨晶のアメシスト水晶群がとても印象的です。近年、アフリカのタンザニア、マダガスカル、ルワンダからは鮮明なラズベリー色を示す良質のものが産出されています。

アメシストの品質評価

 アメシストはジュエリーに適した素晴らしい宝石で、肉眼で見えるインクルージョンがほとんど含まれないため、表面に達するフラクチャーが少なく、どのような形でもカットできます。高品質のものは三角形のブリリアントカット、エメラルド・カット、オーバルそしてクッション・カットにされるのがポピュラーで、プレミアム価格で販売されます。デザイナーによって石の原型を生かし、独自の創造で彫刻する場合も時折見られます。低品質のものはカボションやビーズなどに加工されます。かつて、王族しか入手できなかったアメシストは、今では宝飾市場から容易に手頃な価格で手に入れられるようになり、大きな石はセンターストーンとして人気です。

シトリン

ブラジル産天然シトリンの原石

▲ ブラジル産天然シトリンの原石

 黄水晶-シトリンはアメシストと同様に何千年もの間、人気の黄色宝石の一つとして使用されています。太陽のような黄金色の光を放ち大変魅力的で、“幸福の石”とも呼ばれています。水晶の構造中に微量な鉄が入り、黄色からオレンジ色を発色します。自然界で存在するシトリンは非常にまれであり、地表下でアメシストがマグマの熱を受け、黄色に変化したものです。しかし、市場のほとんどのシトリンは薄い紫色のアメシストに人為的に低温加熱処理を施し、結晶構造中の鉄イオンの電荷を変えることによって美しい黄色に変化させたものです。加熱前のアメシストの色の濃さは加熱後のシトリンの黄色の濃度を左右します。宝石学が発展する前に、シトリンはトパーズと混合されていました。シトリン・トパーズと呼ばれているものは実はシトリンであり、トパーズの代用品として使われました。シトリンはトパーズと並んで11月の誕生石です。主な産地はブラジル、アフリカ、ウルグアイ、チリなどです。

シトリンの品質評価

 最高品質のシトリンは褐色味のない高彩度の黄色や赤色がかったオレンジ色で、マディラ・シトリンとも呼ばれ、大変人気があります。シトリンにインクルージョンが少なく、結晶のサイズも大きく、数カラットから20カラットまでのものが容易に安価で入手できます。魅力的な黄色や赤みのあるオレンジ色のものは、デザイナーや彫刻家によって珍しいカットが施され、様々なジュエリーのスタイルになっています。

アメトリン

ボリビア産天然アメトリン原石

▲ ボリビア産天然アメトリン原石

 アメシストとシトリンが地下で同時に成長してできた自然な紫色と黄色が半々に混ざり合ったものはアメトリンと呼ばれます。ボリビアが唯一の原産地として知られています。

アメシスト-シトリンの処理

 紫色のアメシストを加熱処理することにより黄色のシトリンに変化する現象は1883年にブラジルで発見されました。その後、加熱や照射などにより石英が多様な色に改良させる特殊な処理法が次々と開発されました。例えば、加熱グリーンド・アメシスト(Prasiolite)、照射+加熱レモンクォーツ、照射グリーン水晶、照射スモーキクォーツなどがありますが、色が不安定な場合があり、退色に注意が必要です。

異なる処理法によって改良される各色の石英

▲ 異なる処理法によって改良される各色の石英

アヒマディ博士

執筆

阿依 アヒマディ理学博士・FGA

京都大学理学博士号取得後、全国宝石学協会 研究主幹を務め、2012年にGIA Tokyoラボを立ち上げる。現在はTokyo Gem Science社の代表そしてGSTV宝石学研究所の所長として、宝石における研究、教育セミナー、宝石鑑別などの技術サポートを行っている。宝石の研究、鑑別に関しては日本を代表する宝石学者。

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