由紀さおりさんと行く「BS-TBS 麗しの宝石物語」

ドイツ イーダー・オーバーシュタイン ー 取材日記 ー Part.2

街の中での撮影風景

▲ 街の中での撮影風景

 2016年9月までBS-TBSで放映され、宝石ファンのみならず人気を博した宝石ドキュメンタリー「麗しの宝石物語」、ご好評につき2017年4月から内容を新たに放送しています。2017年7月、8月の放送は、「ドイツ イーダー・オーバーシュタイン」に決定し、6月上旬に現地で番組撮影を行いました。
 7月号に引き続き、BS-TBS麗しの宝石物語「ドイツ イーダー・オーバーシュタイン編」の現地での番組撮影の様子をご紹介します。7月30日(日)の放送では、ムンシュタイナー工房やドイツ宝石博物館を訪れた由紀さんの感動をお伝えしました。今回は、8月27日(日)放送予定の第二弾の訪問先での取材の様子をご紹介します。

彫刻家を育む豊かな環境「イーダー・オーバーシュタイン」

なだらかな草原地帯が広がる宝石街道

▲ なだらかな草原地帯が広がる宝石街道

今回の番組撮影で、イーダー・オーバーシュタインを訪れたのは6月上旬。森の木々がいっせいに芽吹き、草花が色とりどりの姿を見せる一年で最も素晴らしい季節です。草原が続く宝石街道を走る車の窓からは心地の良い風が入ってきます。どこまでも続く広い青空に流れる雲、想像するだけで穏やかな気分にさせられる光景です。私はこれまで何度もこの街を訪れていますが、今回の番組撮影を通して由紀さんとご一緒させていただき、改めて気づいたことがあります。それは、このイーダー・オーバーシュタインが持つ素晴らしい環境が人々の豊かな暮らしを育み、それが作品作りにも活かされているのではないかということです。

駅のホームからも山々の木々が目に入ります

▲ 駅のホームからも山々の木々が目に入ります

この季節、仕事終わりにはやっぱりビールです

▲ この季節、仕事終わりにはやっぱりビールです

 

この街には、巨大なショッピングモールや夜遅くまで営業しているコンビニエンスストア、たくさんの車が行き交う大通り、スーツ姿の人が大勢働くオフィスビルはもちろんありません。その代わりに、季節ごとに移り変わる景色とそこでの豊かな暮らしがあります。夏には青空のもと木々や草花に囲まれ庭仕事に汗を流し、スピースブラーテン(バーベキューの郷土料理)を楽しみます。一転、冬は曇天と寒い毎日が続き、建物の中での暮らしが長くなります。季節を十分に感じることができる環境と生活によって、作家の感性が磨かれ、新しい作品作りのヒントが得られるのではないかと感じました。普段仕事で訪問すると、どうしても作家や作品に目がいってしまいますが、由紀さんとご一緒させていただいたことで、私自身新しい発見ができた旅となりました。

本編の見どころ…

シュミットご夫妻とともに

▲ シュミットご夫妻とともに

 イーダー・オーバーシュタインの多様な宝石と人を様々な角度からご紹介するこの番組、第2回目(8月27日放送分)の一番の見どころは、由紀さんとカメオ彫刻芸術家ゲルハルド・シュミットさんとの出会いです。シュミット氏のアトリエでこれまでに見たことのないカメオに出会い、彼の世界観とカメオへの飽くなき情熱に触れます。私は案内役としてお手伝いさせていただきましたが、彼の彫刻作品とその世界観に目を輝かせる由紀さんの素敵な横顔が非常に印象的でした。

 撮影スタッフしか知らないエピソードを一つご紹介しましょう。撮影中、ドイツ語で説明するシュミットさんに、通訳を介さずに由紀さんが日本語で答えるという場面があったのです。お互いに芸術の道を究めてきた二人、そんな二人が織りなす会話は絶妙で、限られた撮影時間でありながら何か共通の価値観が生まれたのではと感じるほどでした。シュミット氏の持つ感性や技術力はもちろんのこと、なぜこれだけのカメオ彫刻が生まれたのかを、由紀さん独自の視点で紐解いていきます。お楽しみに。

デザイナー日比による取材先「ちょこっと」紹介のコーナー♪

Schmidt工房

閑静な住宅街にあるシュミットさんのアトリエは、日本の文化と西洋の文化を取り入れたような洗練された素敵な空間でした。特に印象的なのはアトリエの窓から見えるイーダー・オーバーシュタインの豊かな自然。芸術作品を作る環境がイーダー・オーバーシュタインにあると実感した瞬間でした。シュミットさんは日本語がとても上手で、温かく私たちを迎えいれてくれました。

シュミットさんの最新のカメオ大作と一緒に
シュミットさんのアトリエにあるお庭にて

▲ シュミットさんのアトリエにあるお庭にて

Peuster工房

工房での撮影の様子

▲ 工房での撮影の様子

お会いした最初の印象は、これぞ芸術家!作品はどれもダイナミックであり、繊細であり、力強いものばかりでした。全てに意味があり、魂がこめられた作品ばかり。説明を聞いていると、最初に見た印象と、聞いた後に見た印象とではとても違いがあることに気づきました。クラシックな雰囲気があるイーダー・オーバーシュタインの中では、まさに新進気鋭の芸術家なのでしょう。

Herbert Klein社

見晴らしの良い丘にあるアトリエ。職人さんがカットする作業場からの眺めは街を見下ろすことが出来る最高の場所でした。カーヴィングされた美しい石はどれも生き生きと、力強さを感じます。動物の作品もありましたが、どれも目が愛らしく、まるで生きているよう。皆さんとても明るくフレンドリーで、とても温かい空間でした。

ベテラン彫刻家クラウス・バステン氏(左)と四代目当主ステファン・クライン氏(右)とともに

▲ ベテラン彫刻家クラウス・バステン氏(左)と
四代目当主ステファン・クライン氏(右)とともに

執筆

ストーンカメオ研究家 三沢 一章

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